工学システムの社会システムとの関わりの深まりに伴う価値観の多様化に起因して生じるコンフリクトの解消に有効な問題解決手順を確立することの重要性は近年とみに高まってきています。本テーマではそこでの考察が評価基準が複数(multi-objectives)であり,意思決定主体が複数(multi-persons)存在することで特徴づけられる点に着目し,柔軟な生産計画の立案やシステム設計を支援する要素技術の開発とそのシステム化を目指します。
生産システムの計画や設計・管理の前提となる価値基準を明確にしておくことは極めて重要です。本テーマでは,システマティックな階層的手法を用いた価値システムの設計法や,多属性となる価値基準を,ニューラルネットワーク等の人間の主観的な判断を効果的に利用できる手法を用いた,柔軟で現実的な同定法の開発と,それを多目的最適化問題の解法に援用することを目指します。
また同時に近年の計算機環境は,分散化やダウンサイジングに顕著にみられるように大きく変化してきていることに着目します。そして最適化技術もOR手法を単純に適用するだけでなく,対象毎の特徴を状況に応じて生かすことのできるような手法の開発を進めます。特に生産システムの多くの重要な問題が多目的な組み合せ問題としての特徴を持つことに着目して,遺伝アルゴリズム(GA),タブサーチ,焼なまし法(SA),ニューラルネットワークなどを従来の数理計画法と効果的に援用した最適化手法の開発とそれらの並列化による高速アルゴリズムの実現を目指します。
情報化社会や循環型社会の到来は,産業や開発事業の広域化につながる物流や施設配置に関わる問題の増加とその解決の重要性を示唆しています。本テーマでは,こうした問題をネットワーク・フロー問題として取り上げ,その信頼性の評価や最適化のための手法の開発を行います。しかしここで一般的に定式化された数理的問題は,規模の増大と伴に極めて求解が困難となるため,高性能の解を現実的な求解努力によって求めることを最優先とするアルゴリズムの開発を進めます。
廃棄物処分施設や分散計算機ファイル設備などに代表されるネットワーク施設の立地や配置を合理化することの重要性は今後、大いに高まるものと予想されます。本研究では、こうした問題を社会工学的に捉えた時の特徴が、経済性のみならず安全性や信頼性など評価の多目的性にあり、一般的に定式化された問題が組み合せ問題としての特徴を持つことに着目して、この解法に効果的な最適化手法、例えば遺伝アルゴリズム(GA)の適用法について研究します。
先に開発した漸進的線形計画法(Progressive LP, PROLP)とそのパラメータ解法は、参照できる解が既に存在する場合や、最終解に至るまで類似の問題を繰り返し解く必要がある場合に特に効率的な解法といえます。本課題ではその効果が著しいと考えられる対象、例えば、線形計画モデル予測制御系の構成、線形システムの柔軟性解析法、混合整数線形計画法等における適用法やその効果ならびに新しい応用対象などについて検討を行います。
ニューラルネットワーク(NN)は非線形な現象に対しても汎化能力に富むモデリング手法といえる一方で万能とはいえません。しかし従来、化学プロセスにおいてNNの構成法と効果的な適用範囲の関係についての充分な吟味はなされていません。本研究ではこうした検討課題を通して、生産プロセスのモデル化やNNの適用によるPID制御パラメータの合理的チューニング法について考察します。
近年のプロセスシステムにおける意思決定においては、プロセス環境の変化や種々の不確定な要因に対する配慮がますます求められてきています。こうした認識の下で不確定性に対応可能なプロセスの計画や設計手順を確立することは重要です。そうした考察を定量化するため、本研究では大規模で複雑なシステムに対する柔軟性解析法の開発を目指します。その上でシステムの評価において重要となる他の評価とのトレードオフを考慮したシステムの再構成法についての考察を行います。