ADMSは,より柔軟で高い生産性を実現するために行われているさまざまなIMS(Intelligent Manufacturing System)研究の中でも,もっとも現実的な次世代生産システムパラダイムとして注目されています。産業ロボット,AGV,工具,ジョブなどの生産現場におけるさまざまな対象が,ADMSの自律エージェントとしてとらえることができます。本研究では,エージェント間での効果的な協調/戦略機構の開発や,生産環境の変化に対して各エージェントが適応的に振る舞うための学習機構の開発を目指しています。
一般に,生産指示は一つ以上の装置からなる工程ごとに出されることが多く,各工程は自工程のスケジュール作成に関する十分な情報やノウハウを有しています。そのため,工程ごとにスケジュールを作成することができれば,生産環境のさまざまな変化に対応することのできる柔軟なスケジューリングシステムを素早く構築することが可能となります。そこで本研究では,設備全体のスケジュール作成に関する上位の管理機構を持たない,分散型スケジューリングシステムの開発を行っています。本システムでは,各工程は他工程との情報交換を繰り返しながら,独自の評価にしたがって自工程のスケジュールを改良していき,設備全体として実行可能なスケジュールを導出することができます(図参照)。
化学バッチプロセスなどの多くの生産システムは,離散事象システムとしてモデル化することができます。ペトリネットは,ネットワークを用いた視覚的な表現力および数学的な解析能力に優れており,離散事象システムの設計と制御に対する有力なモデリング手法です。本研究では,シーケンス制御系を対象に,ペトリネットを用いた制御系のモデリング,シーケンスロジックの検証,シミュレーションに関する研究を行っています。
現在,ISA S-88国際標準によって,バッチプロセスの生産レシピに関する階層的なデータ構造が定められています。しかしながらS-88では,どのようにしてマスタレシピから実際のシーケンス制御プログラムやプラント運転員への指示(コントロールレシピ)を作り出すのかといった,レシピ管理に関する具体的な手段は与えられていません。本研究では,生産計画,スケジューリング,バッチ制御,レシピ管理など,レシピ情報を必要とするすべての生産活動において必要不可欠な,レシピ情報に関する統合的なデータ処理/管理手法を開発することを目的としています。